セールスコピーの技術は行動心理を理解してこそです。セールスコピーライティングは心理誘導技術だと思われることもありますが、間違ってはいないと思います。
そもそもセールスコピーの目的は相手に何かアクションを起こしてもらうこと(例えばお金を払ってもらう、メールアドレスを入力してもらう etc…)。人が何か行動に駆り立てられるには心が動く必要があります。理屈だけでは人は行動しないのです。
セールスやコピーライティングを学んでいる人なら誰もが心得ている法則です。
では、人はどんな言葉やどんなトリガーに心を動かされるのでしょうか? ここではセールスコピーライティングにおいてよく使う心理トリガーをご紹介します。
1.限定性と希少性
「限定性のない広告は広告ではない」と言われるほど、セールスコピーにおいて限定性は絶対に外してはいけないポイントです。なぜ限定性が必要なのか? それは、人は獲得の衝動よりも失うことへの恐怖の衝動の方に反応するからです。
あなたも、地元の観光名所に行ったいことがないタイプではないですか? いつでもいけると思っていると、なかなか行こうとはしないものです。
同じように、いつでも手に入るものは「また今度にしよう」と思われてしまいます。そして二度と戻ってはこないのです。広告コピーを読んだ見込み客が、今すぐに決断しなければと思えるように、期間・数・条件などの限定性を用意しましょう。
希少性のあるものに価値を感じる
あなたの商品・サービスを手に入りにくくすることが大切です。人はいつでも手に入るものや誰でも手に入れられるものに価値を感じません。フェラーリは常に需要を下回るように生産すると言います。すぐには手に入らないものとして価値を高めているのです。
いつでも受けられるサービス、いつでも手に入る商品だと、どうしても価値を感じにくくなります。希少性を出して手に入りにくくすることで、価格設定も上げられますし、人の衝動を駆り立てることもできます。
2.恐怖
なぜ限定性や希少性が人を動かすかと言うと、人は獲得の衝動よりも失う恐怖の方に強く動かされるからでした。その理由は、長い生物の歴史の中で、ネガティブな事象により反応した方が生き残ってきたからでしょう。
人はネガティブな情報に反応するようにできています。そして、恐怖によって抱えたストレスをなんとかしたいという衝動を覚えます。そして安心できる状態になりたいのです。そのため、恐怖は人を動かす強いトリガーになります。
今どれほど深刻な問題に直面しているのか? もしくは、今のままでいるとどのような問題が降りかかるのか? 商品・サービスを知らずにいると、どれほど悲惨なことになるのか? 見込み客がまだ気づいていない問題点を伝えてあげましょう。
恐怖は事実で示す
これは脅迫ではないか? と思うかもしれません。正直使い方次第ではそうなってしまうかもしれません。ですがマーケティングとしては失敗です。一時的な売上は上がるかもしれませんが、クレームが増えたり顧客満足度が下がったり、最悪のケースでは訴えられるかもしれません。長期的に見ると、恐怖心ばかりを煽るのはオススメできません。
ですが、その恐怖もちゃんと根拠に基づいたものであればどうでしょうか? なぜ広告が煽りになってしまうかといえば、それは根拠がはっきりしないからです。事実ではなく想像を語っているのです。言い回しや言葉選びを工夫して、恐怖感を抱かせようとすることに偏っているのです。
事実とはつまり、実際に起こったことです。実際にあった恐怖のエピソードや問題の深刻さを示すデータを伝え、理屈でも納得できるようにしましょう。
解決できるという安心感を与えて購入につなげる
恐怖で見込み客の感情をネガティブにもっていった後は、しっかりと解決策を示し希望を持たせてあげることが重要です。
はセールスでは王道のパターンですよね。解決策とはもちろんあなたの商品・サービスのこと。なぜ問題を問題と認識させて恐怖を与えるのかといえば、あなたの商品・サービスの必要性を実感してもらうためです。あなたの商品・サービスが、人の問題を解決してくれるものであるなら、しっかりと問題認識を持たせるべきです。それがお客さんを救うことにつながります。
3.理由
理由については、名著『影響力の武器』の中で面白い実験結果が紹介されているのでちょっと引用します……
ランガーは図書館のコピー機の前にいる人に、「すみません…… 5 枚だけなんですけど、急いでいるので先にコピーとらせてくれませんか?」という小さな頼み事をすることによって、このさして驚くべきことでもない事実をまず確かめました。
この「要請+理由」の効果は完璧に近いものでした。94% もの人が先にコピーを取らせてくれたのです。理由を述べずに「すみません…… 5 枚だけなんですけど、先にコピーとらせてくれませんか」という言い方で頼まれる条件の成功率と比べてみれば明らかです。この状況のもとでは、60% の人しか承諾しませんでした。
(中略)
「すみません…… 5 枚だけなんですけど、コピーをとらなければならないので、先にコピーをとらせてくれませんか」と言って頼んだのです。その結果、この条件でもほとんどすべての人(93%)が同意してくれました。
なんと、理由が納得できるものかどうか関係なく、理由があることそのものに強い力があるようです。セールスコピーでもこれを利用しない手はありません。
すべてのセールスに理由を用意しよう!
割引をするなら理由をつける。特典を用意するなら理由をつける。なぜ、そのパッケージにしたのか? なぜ数ある材料の中からそれを選んだのか? なぜ、そのビジネスをしているのか? 全てに理由を用意しましょう。そうすれば説得力がアップし、あなたの主張を受け入れてもらいやすくなるでしょう。
また、理由のコピーとして有名なのは、Reason Why Copy です。
なぜ、私に必要なのか?
お客さんにとって必要な理由を説明しましょう。なぜ、あなたの商品・サービスはお客さんにとって買わなければならないものなのか、その理由を説明しましょう。
なぜ、あなたから買う必要があるのか?
同じような商品・サービスがある中で、なぜあなたから買う必要があるのかを説明しましょう。他とはどう違うのか(USP)、あなたと取引することでお客さんにはどのようなメリットがるのか、しっかり考えぬいてセールスコピーに盛り込みましょう。
なぜ、今買う必要があるのか?
限定性・希少性のところでもお伝えしたように、今すぐ行動する理由がないと、お客さんはすぐに忘れてどこかへ行ってしまいます。特にウェブの場合は他の媒体に比べて離脱しやすいので、必ず今買う理由を用意してください。
4.好奇心
広告がまず最初に果たさなければならない役割は、注目を集めることですよね。そして、その先を読んでもらうことが必要です。これをウェブセールスコピーや雑誌広告などでは、ヘッドライン(キャッチコピー)を含むリード部分で達成しなければなりません。
ヘッドライン(キャッチコピー)で人の目を引き、さらに続きを読んでみたい、読まないと! と思ってもらうことが最も重要です。それができなければ、ボディーコピーにどれだけ良いことが書いてあっても読まれないからです。そして、好奇心は人を広告に引きつけ、続きを読ませるのにとても効果的なトリガーです。
今までに見たことも聞いたこともないこと。常識とは違うこと。反社会的なこと。これから何か面白そうな話が始まりそうだ、続きが気なる……と思ってもらえることを、セールコピーの冒頭に持ってくると効果的です。
わたしたちの知らない世界への興味・関心
例えば芸能人の生活。正直自分の人生には何の関係もない他人の生活ですが、好奇心を掻き立てる要素がそこにはあります。週刊誌のヘッドラインには、この好奇心を刺激したどぎついキャッチコピーが溢れかえっています。当然それは効果があるからそうしているわけです。
週刊誌のような言葉を使うのがいいという意味ではありませんが、どうい言葉が好奇心を刺激しているのかを分析する、よい材料になります。週刊誌のヘッドラインはスワイプファイルとしてとても参考になるリソースです。
秘密は最も強力な好奇心のトリガー
この秘密も強力なトリガーです。まぁ好奇心というトリガーを引くための、もっとも使いやすいパターンの 1 つという位置づけでしょうか。
ぼくもそうですが、自分の知らない業界については、何か特別な秘密があると思ってしまうことはないですか? 何か自分の知らない秘密を知っているからこそ、彼らは成功しているんだと感じる。何か自分の知らない秘密によって、彼らは自分たちとは違う存在であり、憧れるような結果を出しているんだと思ってしまうものです。
何か秘密があるんだと思わせることで、読み手をコピーに引き込み、お金を払うべき価値を感じてもらうことができます。
5.社会的証明
多くの人が正しいと言っていることを、正しいと思うのが人間です。
これを利用して、商品・サービスの信頼性や価値を認識してもらおうというわけです。みんながしているという圧力は、とても抗しがたいと思いませんか? 特に日本人は、周りに合わせるというか、和を大切にするというか、悪く言えば流されやすいタイプなので、この心理トリガーはとりわけ効くと思います。
この心理トリガーの具体的な活用方法は、お客様の声(テスティモニアル)を掲載したり、サクラを入れたり、アンケート調査などを実施し顧客満足度を数字で示すなどがあります。
お客様の声は、最も強力なセールスツール
お客様の声は最も強力なセールスツールの 1 つです。Amazon のレビューを見ずに、商品をカートへ突っ込む人はなかなかいないでしょう。星が 4.5 とか 4.8 とか高評価であれば、ほとんど疑うことなくその商品は良いものだと思ってしまうのではないですか?
実際、レビューを読んでみると「高評価だったので買ってみました(が、、、なぜこれほど高評価なのか分かりません)」と書いている人を見かけけます。それだけ影響力があるということです。
ぼくも広告を作る際は、いかにお客様の声を集めることができないか、を考えます。広告の素人が気にするキャッチーな言い回しやセンスのある表現とか、そんなことよりも、お客さんの生の声の方がよっぽど訴求力があります。
誰もあなた(販売者)のことなど信じていません。ですが、見込み客と同じ立場(正確には立場だった)お客さんの声なら、信用度は 540 度変わるでしょう。
6.同情・共感・憐憫
相手の気持に理解を示してあげる。これはセールスコピーの冒頭部分で特に必要です。いわゆるラポールを築くという作業です。ラポールを築くことで、その後のセールスコピーで展開される主張を、受け入れてもらいやすくなります。
相手とのラポールを築くためには、相手の気持を代弁してあげることがポイントです。特に相手が痛みに感じていることを代弁してあげます。「あなたはこんな辛い思いをしていませんか?」「こんなことがあって、こんなふうに感じますよね」と、相手の立場と、それに伴う痛みの感情を描写してあげます。
そして、売り手と買い手という対立する存在ではなく、一緒に買い手の抱える問題や避けたい痛みを解決するアドバイザーとしての立場を確立します。そうすることで、お客さんと同じ方向を向くことになり、対立を解消できるのです。
これはまさに自分のためのコピーじゃないか?
セールスコピーのリード部分(ヘッドラインなど、冒頭の部分)では、読み手に頷いてもらえるかを意識しましょう。「これはまさに自分のために書かれたコピーじゃないか?」と感じてもらえるように、相手が普段考えていることや、相手の使う言葉を意識して感情に訴えかけてみてください。
そのためにはお客さんを知るということが重要になります。お客さんや見込み客にヒアリングして、人の気落ちを知ることが大切です。自分の想像ではなく、ここでも事実に基いてコピーを組み立てていけるように心がけてください。
7.コントラスト
対比という意味ですね。人は何かの基準がなければ何も認識できません。比べることによって違いを認識し、価値を認識します。あなたの商品・サービスも、おそらく何かと比較されているはずです。
特に価格。何か別の価格を基準にして、あなたの商品・サービスの価格は妥当なのか? お得なのか? いやいや、高すぎるのか? を判断しています。セールスコピーで価格のプレゼンをするときは、必ず価値の基準をこちらから示しましょう。
ポイントは最初に目にする数字を高額な金額にしておくこと。その高額な金額に対して、いかにあなたの商品はお得なのかをアピールしてください。
勝ち組/負け組のコントラストを無視できない
『金持ち父さん貧乏父さん』はコントラストを使ったタイトルとして有名です。以前 Apple が行った広告キャンペーンに、「I’m a Mac. I’m a PC.」という挨拶で始まる Apple の Mac と Window の PC を対比させた CM がありました(日本ではお笑いコンビのラーメンズが演じていました)。コカ・コーラとペプシも、確か同じような広告キャンペーンをしていた気がします。
分かりにくいコンセプトを伝えるときに、比較によって説明するのは有効です。そして意図的にどちらの方が賢明な選択肢なのかを演出します。比べることで違いを認識しやすく、またどちらかを選ばなければならない、と相手に要求する行動を絞ることができます。
8.アイデンティティ
ぼくたちは自己表現のためにものを買うのではないかと思います。MacBook Air を買う人は、MacBook Air を通して自分がどういう人間なのかを表現しています。
前述の Apple の広告キャンペーンでも、このアイデンティティに訴えているのが分かります。 「自分はクールな人間だ」という自己認識を持っている人は、Mac を使えと言わんばかりです。
ファッション、車、インテリア、食事、漫画や本、映画に至るまで、自分がどういう人間なのかを証明するために存在しているのです。そして、自分の自己認識を確かなものにするために、ぼくたちは必要性とは全く無縁のものを買います。ただ欲求を満たすことが目的なわけです。
お客さんはどうありたいと思っているのか?
この強力な心理トリガーの使い方は、例えば家族。家族の中で自分はどうありたいと思っているのか、そのアイデンティティに訴えます。
ファミリーカーを売るのであれば、自分は良い父親でありたい、良い夫でありたいという欲求に訴えます。自分が理想としている父親像・夫像にとって、そのファミリーカーがなくてはならないことを訴えます。その車が、自分の理想とするアイデンティティを確かなものにしてくれるというわけです。
セールスコピーの一言一言には、明確な意図を持たせる
いかがでしたでしょうか? セールコピーをつくる際に、ほぼ盛り込んでいる心理トリガーをご紹介しました。
広告で使われる心理トリガーは、他にもたくさんあります。おそらくまだ 50 個くらいはあると思います。その全てを理解する必要はありませんし、心理テクニックばかりをつかうのが、良いセールコピーというわけでもありません。
ですが、セールコピーには無駄な一言など 1 つもありません。全ての言葉が、“見込み客に商品を買ってもらう” という明確な 1 つのゴールのために存在しています。そのためには、これらの心理トリガーを理解していることは、最低条件なのです。
まずはこれらの 8 つのトリガーだけでも、使いこなせるようになってください。
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