なぜ、パソコンの使い方を知りたくて、Wordの本を買ったのか?人の購買行動は不合理を実感

ぼくの母がパソコンの本を買ったのですが、「あまりにも難しくレベルが違いすぎた。買う本を間違えた。」とそんなことを言っていました。
使ってるパソコンは Windows。OS は XP。
もちろん、そんな事は知る由もないと思いますが、買っていた本のタイトルはこうです。

「イライラ解消!ワード即効ワザ99」

MicrosoftOffice の Wordの使い方解説本。仕事効率を上げるような小技が書かれた本です。
そんなにパソコン使うのにイライラしていたのだろうか・・・。一体この本のタイトルのどこに惹かれて購入を決断したのか? 立ち読みでもして内容の確認をしたのだろうか? これは、コピーライターとして非常に興味深い事例です。この時の購買心理はかなり見えない。動機や欲求が分かりづらい。何が決めてになったのか検討もつかない。後で母に訊いてみる必要がありそうです。
が、訊く前に色々と予想をしてみようと思います。

購買行動の背景はなんだろうか?

そもそもパソコンに詳しくない母は、普段はインターネットくらいしかしません。写真を撮ってそれをパソコンに入れたり、プリンタで印刷したりはするみたいですが、当然 Word の本を勉強しなければならないような作業はしていません。そもそも Word が何なのか、分かっていないはずです。
じゃあなんで Word の本、しかも基礎ではなく裏技本みたいな本を買ったのか?
ぼくが思うに、Word が何なのか分からない母にとって、この本は “文字入力” の本に見えたのではないでしょうか? 確かに文字入力は苦労しているようです。メールなどもたまに利用したりします。Word を固有名詞として認識しない場合、ワード=文字ですよね。だとすると、パソコンの文字に関係する本だと思ったとしても納得がいきます。
さらに初心者にありがちな心理的な状況として、「何を選んでいいか分からないから・・・」というのがあります。
この場合行動パターンは 3 つに分けるとすると、
「何を選んでいいか分からないから、何も買わない」
「何を選んでいいか分からないから、全部買う」(富裕層の行動パターンかも^^;;)
「何を選んでいいか分からないから、とりあえず適当に買う」
と言えます。そして母がとった行動は、「何を選んでいいか分からないから、とりあえずやけになって(?)適当に買う」に近いのではないかと思います。

迷った時の思考停止的な購買行動

あなたにも「ん〜〜〜・・・よく分かんないからとりあえずこれで。」という感覚で購買を決定することはありませんか? こういった行動は、高額な商品に対しては取れないと思います。慎重に検討に検討を重ねて購入を決定するでしょうから。
ですので、比較的安価で、仮に選択を間違ったとしても痛くないような商品に対して、深い検討を省略して購入の決定を下す事があるのです。無意識に、半自動的に、特に考える事なく決定します。
しかし、実際これでは今回考察している母の行動原理の解決にはなりません。なぜなら、「とりあえずだったとしても、なぜどれでもいい中でその商品を選んだのか?」という疑問が出てくるからです。
「とりあえずこれで!」と言って購買決定をする時に、“これ” を選んだ理由というのがあってもいいはずです。しかし選んでいる本人が “ とりあえず ” な感覚なので、理由を訊いてもうまく自分の行動理由を説明できる人はいないでしょう。そしてもしそのような事を訊かれたら、その時一番つじつまが合う理由をこしらえて、それを最もな理由として語りだすのがオチです。
つまり、この部分はかなり自分の意思とは関係ないところで動いていると言ってもいいのではないでしょうか? 一言で言えばそれまでの人生経験を反映した決定が行われているということです。
例えば、赤より青が好きとか、ハードカバーより文庫本とか、1,000 円以下の本は安いと感じるとか・・・。同じような本の著者の名前が「田中」と「斉藤」だったら、「斉藤」を選ぶとかあるかもしれません(ここ、他意はありません)。いずれにせよ、これらはほとんど無意識で行われているということです。

セールスププロセスの中で無意識を顕在化してあげる

このあらゆる可能性を持った無意識を顕在化してあげる行為が、セールスプロセスにおいて重要なことになってくるわけです。「イライラ解消!」というフレーズがタイトルに付いていることによって、無意識に感じていたパソコンへのイライラが顕在化し、そん時の購買決定に一役買ったのかもしれません。
それは恐らく本人も中々自覚できる部分ではないのかもしれませんが、そういった購入の可能性、チャンスがあるということが大切なのです。
こういう相手の気持ちを想像する行為って、日本人は得意なはずなんですよね。相手の立場に立つ、ということが自然にできる。西洋人はできないと聞きます。自分の立場や主張をしっかり示します。
ですが最近は欧米でも “相手の立場に立つ”という事を意識しだしたようにも感じます。もっとも、日本人的なそれと、欧米人のそれとでは根本的な目的意識の違いから、全く別物になっているように思いますが・・・。
つまり、日本人は相手の立場に立って、相手の要求を受け入れるタイプ。欧米人は相手の立場に立った上で、自分の要求を押し通すタイプ(笑)
なんか話がずれてきましたが、何が言いたかったのかというと、相手の立場に自然に立てる日本人は、コピーライター向きなんじゃないかということです。相手の立場や背景を想像することは、とても大切なことですから。
今日はこの辺で。


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コメント

“なぜ、パソコンの使い方を知りたくて、Wordの本を買ったのか?人の購買行動は不合理を実感” への1件のコメント

  1. 神山のアバター
    神山

    このサイトに書かれていることは、かなりレベルが高いと思います
    素晴らしい記事です
    私なりに母がなぜ「イライラ解消!ワードそっこうワザ99」を買ったのか分析しました
    おそらくタイトルで購入を9割決めているのではないでしょうか
    ①「イライラ解消!」
    ここで一発目で心理トリガーをバチッとひいてますね
    自身のPCにイライラして悩んだから書店に来た。まさにベストマッチと感じたのでしょう
    ②「ワードそっこうワザ99」
    ここは抽象的に裏技=楽できると考えたのではないでしょうか
    ワードという単語は理解できないけど、深く認識してない。脳が認識してないと思います。せいぜいPCにかかわる何か。程度だと思います
    PCのジャンルにあるから、大丈夫だろうと思ったのではないでしょうか
    このことから、母の人間像は、わからないことがあればすぐに人に聞く人
    難しいことはしたくない、楽なことが好きな人
    自分自身であまり深く物事を考えず、なんとなく大丈夫で決断する人
    性格は温和で協調性がある人
    そんな感じがいたします
    購入者がそれぞれな依存する求める一番強い欲求
    それに合う文章を一発目でバチッと書いていく
    それで購入するか決まると思うと人間の脳は面白いですね。

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